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再会
10日後。
僕のすぐ目の前に、壊れてしまったあの人がいる。30年ぶりのあの人は、すっかり変わり果てた姿でうなだれている。視線が宙を飛んだり地を這ったりとせわしない。が、耳元で名を呼びながら、小さな両手をそっと包み込むように握りしめたとき、物悲しそうな瞳が僕と重なった。節子の瞳に、歳を重ねた自分が映っている。
遠くで風の音を聞いた気がした。
そして僕は、抗うことのできない強烈な力で、遠い昔のまぶしい季節に、いや、呵責の季節に引き戻された……。
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