第1章

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 夕日ってこんな綺麗なオレンジ色だったか なあ。と思いながら私は家路へと向かってい た。 しがない製造会社の経理をしているサラリー マンの私は毎日毎日残業続きでへとへとだっ た。体が壊れるのが先か心が壊れるのが先か、 そんな事を考えながら、もう十年以上、面白 くもない仕事を続けていた。 その日はたまたま取引先の発注ミスによる 納品遅れのため、5時の定時に帰ることがで きた。私は、仕事が後回しになっただけなの に、それでも早帰りの嬉しさに浸っていた。 夜の前の夕日の燃えるような明るさ、静ま りつつあるマンション街、まるでおしゃべり をやめたようにひっそりとした並木道、いつ も歩いている道も時間帯が変わっただけで随 分新鮮に感じられた。 たまにはこれぐらいの息抜きもいいかもと 軽い足取りでアパートに帰ろうとしていると どこからともなく、子供の泣き声が聞こえて 来た。 道の左手にある第二公園からだ。そこは、 街中にしては立派なものだった。滑り台、ブ ランコ。シーソー、砂場、ジャングルジムと 遊具が一式揃い、滑り台はゾウの鼻をモチー フとしており、シーソーは宇宙の絵が描いて あり無重力を表しているのだろう。本当に豪 華だ。 ここら辺は、金持ちが多いのでそこのママ 連中のリクエストなのだろう。 泣き声の主は砂場でシャベルを使いお城ら しきものを作っていた。 「どうした坊主。」 かがんでいて暗いこともあってよく見えな いが、小学校低学年6~7歳といった所か。 話しかけようとする度にクイッと向きをか え背を向け顔を見せない。 「おい。」 「プン。」 声をかけるそっぽを向く。2~3回ほどし た後私はあきらめた。そもそも、自分の子供 じゃないし関係ない。こちらは仕事疲れで早 く帰って寝たいのだ。 「ジーッ」 公園から出ようとした途端今度はこちらを 向いて見つめてきた。何だ、構ってもらいた いんじゃないか。正面から見るとかわいい顔 をしている。丸顔で目鼻立ちがぱっっちりし ていて、おでこが広いことも返って可愛らし さを強調している。 特に気に入ったのが目だった。涙で宝石の ようにキラキラ輝いていながらまたどこか暗 さを備えておりアンバランスな魅力があった。 「お前、可愛らしい顔をしているな。」 「僕は男だぞ、気持ち悪い。」 少年は顔を赤らめた。 「名前は?」 「ヒロシ」
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