勿忘草～雨～

雨はみんなにひとしく降りそそぐから

「雨はいいね。みんなにひとしく降り注ぐから」

優しい声。

「え？」

いつの間にか隣にいた男性が、私が思っていたのと同じことを口にして、思わず声が出て彼を見上げる。

「ん？　僕、いま口に出してしまっていた？」

その人は背が高くて、私より２～３歳くらい年上、２０代前半の男性で、照れた顔で私を見てそう言った。

とても優しそうで、でも、どこか哀しそうで。

「は、はい、でも、その、私も同じことを考えていたから驚いちゃって……」

「そうなんだ。何だか嬉しいな、雨が好きな人がいて」

そして素敵な笑顔を見せた。

その笑顔にやられたのだと思う。

すごく心臓がドキドキして、この人に聞こえていたらどうしよう……そう思ってしまう。