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「はは、普段引き籠もっているから、ついつい思ったことを口にしちゃったのかもしれない」
でもその人は、気にしたそぶりもなくそう言って横髪を撫でた。
その仕草もとても柔らかくて、まるで自分の髪を撫でられているような感覚になる。
「そ、そうなんですか? あまりそういう風には見えないのに」
私は照れて、その人を直視出来なくなったので、横目でチラリと見る。
とても爽やかで健康そうな顔をしているから、部屋に引き籠もっているイメージが湧かない。
「そっか、ありがとう」
私とそんなに歳は変わらない筈なのに、すごく落ち着いている大人の男性だ。
「少し雨が弱くなったみたい」
「あ、そうですね」
「じゃあ僕は行くよ、ありがとう」
そう言って彼は、優しく微笑みかけてくれてから、夜の雨の中を走っていった。
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