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積み石
大学入学で、小学生の頃仲の良かった友達と再会し、相手に誘われて同じサークルに入った。
そこは山岳部という程ではないけれど、山にキャンプやハイキングに行くのが好きな人達の集まりで、俺もアウトドアの方だから楽しくみんなで出かけていた。
少しまとまった休みがあれば、すぐに自然の中へ出かけて行くのが当たり前になっていて、その日も都合のつく面々で集まり山歩きをした。
集団行動もいいが、オリエンテーリングふうに班を作り、決められたコースを回ろうということになり、十二人を四班に分け、三人ずつでコースを巡った。
その途中、コースの脇に似たような形の石が幾つも落ちているのが見えた。
どれも割と丸っこくて、大きさは男の拳くらい。汚れ方の具合から、最近掘り出されたのではなく、長いこ地表に放置されていたような印象だ。
「何だこの石?」
同じ班になった男の先輩が石を蹴ろうとする。それを、やはり同じ班の女の先輩が止めた。
「蹴っちゃダメ」
「何で?」
「多分これ、何かの目印で積まれていた石だよ。ここにそれっぽい跡があるもん」
言われて見てみると、女先輩が示す土が僅かに窪んでいるように見えた。
「大きさも形も均一だし、積みやすい石を選んで持って来て、ここに積み上げたんだと思う」
「何のために?」
「それは判んないけど…何かの目印とか?」
「目印って、ここは子供や老人でも日帰りできるハイキングコースだぞ? そんなもの置く必要ないだろ」
確かにその通りだと俺は思った。
もっと険しい山の獣道ならいざ知らず、ここは簡単な道案内MAPがあるようなハイキングコースだ。わざわざ積み石の目印なんてする必要はないだろう。
「ただの石だよ。そんなモン放っておけって」
「でも…」
「次の奴ら来ちまうだろ」
男先輩が少し苛ついたように言う。班分けでの行動は単なる気分でしたことだから、追いつかれても何も不都合はないのだが、この人は結構負けず嫌いなので、どうしても追いつかれたくはないらしい。
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