恋愛書架(2)

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今日は、特別な日。 だからか、校内も華やいでいた。 他校の男の子にチョコを渡す話をする生徒。 友達同士でお互いがほしそうなものを渡しあう生徒。 学校帰りにおそろいの何かを探しに行こうと約束する生徒など。 やはり女子高だからだろうか。 バレンタインの日にかける情熱は、とても熱かった。 校内で人気のある女子にバレンタインだからチョコを渡して、少しでも仲良くなりたいという生徒も多い。 そして、その仲良くなりたいと思われる女子は、非常に困っていた。 (もう図書室開いちゃったよー) 心の中でそう焦りながらも、自らの性格が邪魔をしているのか、彼女らを振り切って、図書室に行くという選択肢はなかったようだ。 根がいい子である浅木にとっては、せっかく話しかけてくれている子を放置して、図書室に駆け込むなんてこと、できなかったのである。 それが大好きな水嶋を苛立たせていることなど、このときの浅木には気づくことはなかっただろう。 今は目の前のことで、いっぱいになっていたのだから。
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