4人が本棚に入れています
本棚に追加
今回の戦も勝利した。
味方の兵に損害が少ないのは、いいことだ。
女王はひとりで熱心に祈っていた。
それを信心深いと他人(ひと)は言う。
が、祈っている内容を知ったら、絶句するだろう。
「陛下」
呼ばれ、女王が振り返ると将軍のアレックスがいた。
「なんだ」
「何を熱心に祈っているのですか?」
「お前には関係ない」
フッと、笑いながら答えると、自分より五つしか歳の差がない年上の若き将軍は、真剣な面持ちで想いを伝えてきた。
「陛下、わたしはあなたをお慕いしています」
「アレックス?」
「答えは今はいりません。ただ、ずっと待ってますから」
言って、踵を返し去ってゆく。
女王はひとり唇を噛み締めた。
アレックス、その想いはわたしには答えられない。
わたしは自分を殺めてくれる、双子の魂を乞い求めているのだから。
アレックスが言った言葉が胸に響く。
「ずっと待ってますから」
女王は涙を流して、また神に祈る。
どうか、姉の御魂を現世へ。
わたしが、わたしでいられるうちに……。
「ずっと待ってるから、シー」
最初のコメントを投稿しよう!