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あの日から数年後、由緒正しい家柄の娘を妻に娶り、四人の子をもうけました。
たくさんの子に囲まれ、幸せに満ちるはずだった日々。
しかし、ここでも、あの言葉が私を締め付けるのです。
毎夜、遅くに帰宅すると、出迎えてくれる妻。
その口から真っ先に出てくるのは、
『お待ちしておりました。
遅くまでお疲れさまでした』
妻に他意はなかったでしょう。
しかし、言われる度に、
いないはずの彼女の、
寂しげに、
それでいて恨めしげな彼女の顔が、
私を見つめるのです。
『待っていた』と。
ただ、そう言われただけなのに、私は、恐怖すら覚えました。
それが幻だと分かっているのに、身体が震えるのです。
気付くと、私は家族に暴力を振るうようになっていました。
理由のない暴力。
いや、理由はある。
しかし、それは私にしか理解出来ないもの。
やがて、家族は離れ、私は一人きり。
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