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僅かな逢い引きの時間。
彼女と色々な事を話しました。
私が通う学校の事、近所の事、そして、彼女の出身地の事。
彼女は、遠く陸奥の人間でした。
幼少期に家を出され、以来、様々な家で下働きを続けてきたという。
私の家での契約が終われば、またどこか遠くに行くことになるだろうとも。
何年もの歳月を、他人のために捧げ、自身は都合のいいように扱われるだけ。
そんな彼女の境遇に心から同情しました。
しかし、ここではどうにも出来ない。
彼女を妻に迎えることは出来ない。
せいぜい、別棟に住まわせるのが関の山。
それでは、なんにもならない。
ただ、彼女が後ろ指を刺されるだけ。
生きるに困らなくとも、生きるに苦しかろう。
ならば、私が彼女と家を出たらどうか?
少なくとも、彼女は一人ではなくなる。
苦難はあるだろうが、彼女となら乗り越えていける!
そう思った私は、駈け落ちを決意しました。
私の身の上を慮った彼女は、何度も引き留めたが、それでも、最後には決意を共にしてくれて。
手段、日取り、駈け落ち後のあて。
様々な問題を話し合い、答えを出しあいました。
二人の未来のために。
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