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「あ、結い紐がねぇわ」
ある朝、いつも通り髪を結おうと思ったら結い紐が行方知れずになっていた。
(探してみるか。多分、執務室で外したような気もするし)
なくても別に支障は特にないので問題はないんだが、ここ数年よく使っている結い紐だったから愛着は多少あるからモヤモヤというか何とも言えない感覚になる。
とりあえずの代わりと思い、髪を纏めて銀の鈿をさして鏡を見たんだが、違和感がかなりある。
(チッ、やっぱ紐じゃねぇと違和感があるな。とっとと探さないと。この髪型じゃ、女に見えて仕方ねぇわ)
自室から離れ、執務室へ。
その道中城の侍女や兵士達とすれ違う度に2度見され、若干の精神的な疲労に襲われたのは仕方ない。
「?っかしいな。確かにここで外した気がするんだが」
執務室に着くなり見た執務机の上は昨日分の書類と新たに追加されたであろう書類しかなく、結い紐は見つからない。
(ここじゃなきゃ、どこに落ちてるんだ?結い紐)
心当たりを自分の中で思い浮かべたりはしたんだが、ここ以外ないわけで。
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