それは偶然でなく、必然で

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この出逢いは偶然にしては出来過ぎていた気がする。 「チッ……伏せろぉぉぉぉっ!!」 戦場に踊り出た時、カリーナエ国の兵がとある男を後ろから斬ろうとしていたのを『異能』で見えてしまったのは偶然だった。それは確か。 随伴していたうちの兵から弓矢を掻っ払い、矢を放ってその男を助けたのも偶然。 まさかそれがサゼルメリクの王だなんて…ホント出来過ぎたシナリオで、誰が演出してるのか知りたいわ。 「頭様?」 「私が王ということは伏せますよ。キミと私は同じタラゼドの兵で斥候という事にします」 「ですがっ、満月様や真珠様に知られたら……」 「今、彼らはここにいませんからキミが黙っていてくれれば良い話です。それに幸いにも私が他の王の前に出るのは、これが初めてですから誤魔化せるはずです」 オレが助けた男、いや、サゼルメリク王は既にこちらに気付いてるわけで、兵を言い包めている間にこちらに近付いていた。 「そこの君達、タラゼドの者だな?何故、俺を助けた?」 近付かれてることに気づかずにいたもんだからどう言うべきか悩んでしまい、話せない。 「え、と……」 「……か、頭様からサゼルメリクと事を荒立ててる場合ではないから斥候中にサゼルメリクの者が攻撃を受けていたら助けるよう命令されただけだ」 思わぬ所から助け舟が。なんだかんだでうちの兵は度胸があるなと思ってしまった。 「そうか…助かった」 「まだ安心するのは早いと思う。沖で敵の船が爆破されたのは確認できたが、まだそこらにカリーナエ兵が潜んでるかもしれない」 まだあちこちで戦火が燃えている。呑気に会話をしてる場合じゃないだろう。
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