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呼吸を整えて、非常階段から体を飛び出させると。私の身体は自由落下していった。
これで、楽になれる。これで死ねるんだ。
そう確信した時、懐かしい声が耳元で聞こえた。
「ずっと待ってるから。貴方の寿命が尽きるまで……ずっと」
それは、紛れもなく失ったはずの彼女の声だった。その声は確かに私の耳元でしたのだ。
落下する最中に。確かに聞えた。
私は気が付くと1階から8階の様子を横になりながら見上げていた。
思わず笑いが噴き出てしまう。体のあちこちが痛い。しかし、そのどこにも折れた様子はなく。
呼吸もまともにできている。
「まさか、この高さから死なないなんて……」
しかも強く打った程度だ。地面のアスファルトを手で確認する。固く冷たい感触がしっかりとした。
起き上がり、8階に昇ると遺書と私の靴がそこには、そのまま置かれていた。
彼女の言葉を思い出した私は苦笑いすると、今までの死ねなかった理由が彼女にあるのだと思った。
寿命がくるまで待ってる。か……。それがいつかは解らない。でも、彼女が
それまで生きていてほしいと願うながら、私は生きているべきなのだろう。
そう思うと生きていたいと思えるようになった。
家に帰り、明日から実家に戻って再就職先を探そう。もしくは大家に頼んでもうしばらく待ってみよう。
そう思いながら私は眠りについた。
久々に希望と期待が見えてきた気がする。何年でも彼女が待っていていくれるなら
私は生きていよう。
そして、翌日――。
私は一度、実家に帰ることにした。そして、その帰りの電車は脱線事故を起こし
あっけなく私の命を奪っていった。
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