契約

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私とアイが出会ったのは1年前だ。 その頃は今よりもくだらない人間だった。 私は病院で死んだ魚みたいな目をしていただろう。 人間不信になって、食事が喉を通らなくなり、眠れなくなった。 やっと眠れても、すぐに目が覚めてしまう。 病院では点滴をうってもらい、流動食を胃に流し込んでいた。 病院に運ばれる前は酒ばかり飲んでいた。 飲んでも気持ちが晴れるわけでもないのに、何かに頼らないと立ち上がれなくなりそうだった。 私でも手が出せるのが酒だっただけの話だ。 何もする気が起きず、毎日 病室で窓の外を見ていた。 今 自分が1番 不幸みたいな顔をしていただろう。 実にくだらない人間だ。 人によって、辛い思いは様々だ。 一見 幸せそうに見える人でも、何かしら不満やコンプレックス・痛みなど抱えているものだ。 でも、この時の私は周りに目を向ける余裕がなかったのも事実だ。 そんな時 アイに出会った。
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