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しばらく歩くと小さな家が見えてきた。
「あれが僕の家だよ。」
タケルが指差した家はかなり こじんまりしていて、レンガは使わず石積みの外壁で屋根はスレート葺き。
白い外壁にはドクダミに似た植物が窓、入り口以外をほぼ覆っていた。
言われなければ、見逃してしまうような雰囲気を持っている。
何だか人目を避けている印象を受けた。
タケルの雰囲気からして、もっと柔らかい家を想像していたので少し驚きだ。
タケルは迷いなく歩を進める。
そんなタケルを鋭くユキナは止めた。
「待て!」
大きな声ではないが、声の鋭さにタケルは少し驚いた。
「ユキナさん どうしたんですか?」
アイは不思議そうに聞く。
「家に明かりがついていない。」
「寝てしまっているのでは?」
「自分の子供がまだ帰っていないのにか?」
アイはハッとし黙り込んだ。
「寝てしまっていても、自分の子供が帰っていないのであれば、明かりはつけっぱなしにしている可能性が高い。」
ユキナは続ける言葉を選んだ。
「嫌な予感がする。」
アイもタケルも黙り込んだ。
「タケル。」
ユキナはしっかりした声で呼ぶ。
「何?」
弱々しくタケルは返事した。
予期せぬ展開に大分 戸惑っている。
「これを。」
そう言ってユキナはしゃがみ、自分の首から外しタケルの首にペンダントをかけた。
「これは?」
「タケルを守ってくれるように。」
ユキナは驚く程 優しい声で言った。
「タケル。今から家に入っても良いだろうか?
タケルはアイと一緒に少し離れた所で待っていてくれないか?」
今度はしっかりした声でユキナは言った。
ユキナの灰色の瞳をタケルの金色の瞳がぶつかり合う。
「分かった。」
返事には少し時間がかかったが、他に選択肢がないのが伝わったのだろう。
「後でタケルの分も私がしっかり怒られるから。」
今度は再び優しい声で言った。
視線だけをアイに移して、
「アイ。タケルを頼む。」
「はい。」
アイはしっかりした声で力強く頷いた。
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