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アイとタケルは、言われた通りに少し離れた場所で待っている。
ランタンを片手に、ユキナは慎重に家の前まで行った。
危害がないように壁に背をつけたままで、右手で勢いよく扉を開けた。
嫌な鉄の匂いが鼻を刺激する。
どうやらユキナの嫌な予感は当たってしまった。
壁から離れ、開けた扉の前に立つと酷い光景が広がっていた。
大人と小さな子供が血だらけで倒れている。
部屋の中は荒れている。
暗闇でよく見えないのは逆に救いかもしれない。
しんと静まりかえった部屋は、以前のぬくもりも優しさも感じられない。
ユキナはこの家の以前の姿を知らないが、タケルの感じからすれば大体の予想はつく。
ユキナの様子にアイもタケルも言葉を失っている。
その時、ユキナの横を黒い何かが通った。
ユキナは驚き、すぐに正体判明に後ろを見る。
1人の男が立っていた。
全身黒づくめで細くて鋭い目をしている。
男には血の匂いが纏わりついている。
ユキナは構えた。
「誰だ?」
「俺は影の暗殺者。
タケル様の身柄を引き取りに来た。」
男は素早くそう言って、タケルの姿を確認した。
ユキナには目もくれず、男は一気にタケルへ向かう。
「待て!」
思わずユキナは叫んだ。
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