閉ざした心

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「私はくだらない人間でね。その男と女が許せないのだよ。」 「長年 付き合い結婚の約束までしたのに、あっさりと私を捨て、違う女に乗り換えたんだ。私の友人に。」 話している間もやはりユキナは無表情だ。 大男は意外そうな顔した。 しかし、ユキナの目を見れば、嘘ではないことが分かった。 ユキナはリングから静かに降り、司会者に後の勝負は棄権すると言って闘技場を去る。 入口付近にいた女性に声かける。 「アイ。行くぞ。」 「はい。」 アイと呼ばれた女性は、美人のユキナとは違い可愛らしい顔をした優しい雰囲気の女性だ。 眼鏡の奥の緑色の瞳が更に優しい印象を与える。 そのまま闘技場を出ようとしたところで観客に声をかけられる。 「ちょっと待った。」 「今すぐ戻りなよ。姉ちゃん。」 「俺はアンタに手持ち財産かけたんだぜ。」 闘技場は勝者は誰か?などの賭け事がされることが多い。 はっきり言って関係ないが。 「しかし、それはそちらの都合だろ。棄権することはルール違反ではないはずだ。」 しかし、男達の訴えは次第に辛辣に変わりつつあった。 ユキナは、小さくため息をついて、 「アイ。先に行って耳を塞いでろ。」 アイは大人しく頷いて闘技場の外に出た。
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