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柿本課長を見送った後、今日の結果を少しまとめたくて私はもう一度会社に戻る事にする。
いま手持ちの資料と自分のパソコンに入っているデータを照らし合わせ、修正箇所を今日の間に直しておきたい。
それをプリントアウトしておけば、次の日課長も私自身もスムーズに仕事を進める事が出来るから。
今回の案件が落ち着けば柿本課長の企画は私から離れ、私はまた別の営業マンのサポートをする事になる。
次またいつ課長とお仕事出来るか分からないし、いま出来る精一杯の事をやっておきたい。
「よし、頑張るか~」
時間も夜の七時を過ぎているという事もあり、社内にいる社員は普段よりぐっと減っていた。
隣の席の咲子も今日は帰ったみたいだし、私も早く終わらせて帰ろうっと。
そこでふと、この間の飲みで咲子を送って行った仁科君の事を思い出す。
咲子の家に上がったんだろうか、とか。
酔っ払った咲子に手を出してないかな、とか。
考えればキリがないほどの疑問が心の底で渦巻いているけれど、そのどれ一つとして絶対に口には出さないと決めている。
こんな醜い感情は、自分の中だけで留めなければならない。
恋愛が絡んだ女同士の争い事は酷く残酷で醜い結末になる事が多いと重々承知しているし、咲子とは絶対にそんな関係にはなりたくなかった。
いや、多分、私の気持ちを話した所で咲子なら堂々と話を聞いてくれる思う。
それでも、私が自分で飲み込めば何の問題もない事だから。
咲子が大事で、仁科君が大事。
だから、三人の関係を崩したくはないし、二人の邪魔をしたくない。
これが正しくても間違っていたとしても、私は自分の考えを貫くつもりだ。
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