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そういえば今、新しい顧客をゲットする為担当地区を走り回っているらしい。
毎日朝早く来てほとんど会社には戻らず、夜も遅くまで働いているようだ。
良い契約先が見付かっていればいいけど……。
そんな風に思いながら、帰って早々タイムカードを押している仁科君に歩み寄る。
「お疲れさま、仁科君」
「お、真尋。お前も残業してたの?」
振り返った彼の顔はこんな時間だというのに元気いっぱいで、営業回りの疲れを微塵も感じさせない。
さすがだな、と思う。
営業成績が良い人みんなに共通するこの体力の凄さ。
私にはない分、憧れてしまう。
「うん、今終わって帰るとこ」
「あ、俺も俺も。一緒に帰ろ」
「ーーうん」
変に少しだけ空けてしまった間も、相手に気付かれないよう当たり障りのない笑顔で誤魔化す。
まぁ、そんな事をしなくたって何も気付いてないだろうけれども。
「飯はまだだよな?何か食べてく?」
「え……と、どーしよっかなぁ」
そうやって自然に誘われると、こちらとしてはどう返事をすればいいか迷ってしまうから困る。
一緒にご飯は食べに行きたい、けど。
二人だと何か、緊張やら何やらで墓穴を掘りそうで。
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