恋とは耐えるものである。

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「今帰りか、お二人さん?」 ちょうどフロアを出ようとした所で、もう一人営業マンが帰って来た。 その人の姿を見るなり、私の身体は緊張で少し強張ってしまう。 営業課の稼ぎ頭である東堂さんだ。 成績トップのこの人は三十三歳という若さで営業二課課長の地位に就き、いつも余裕たっぷりの雰囲気を纏った正真正銘の出来る男。 ルックスだってどこからどう見てもイケメンで、色気のある精悍な顔付に社内の女子社員は常々目をハートにしている。 私だって例外ではないけれど、何と言うかこの人は私と住む世界が全く違う気がする。 だからか、このザ・出来る男・東堂さんを見ると少し萎縮してしまう。 「はい、東堂さんはまだお仕事ですか?」 小さく縮こまっている私の横で、堂々とした態度のまま言葉を紡ぐ仁科君。 ちょっとキュンとしちゃったとか、内緒だからね? 「ああ、もう少し詰めておきたくてな。お疲れ仁科、鈴村さん」 「お疲れさまです」 二人で声を合わせて頭を下げると、男らしい瞳を柔らかく細め微笑んだ後東堂さんは自分のデスクに歩いて行った。
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