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「はぁ……なんか緊張しちゃったな」
フロアを出て廊下を歩きながら、私は少し詰まっていた呼吸を大袈裟に吐き出して見せた。
そんな私の様子に仁科君は小さく笑いながら「東堂課長?」と楽しそうに聞いて来る。
「うん。なんかあれよ、なんというか……雲の上の人すぎて直視出来ない」
「なーんだそれ」
私の言葉が理解出来なかったのか、片方の眉を下げながら軽く肩を竦める素振りを見せる。
そんな姿すらキュンと来るとか、私結構末期かもしれない。
「仁科君緊張しないの?なんか……迫力凄いじゃない東堂課長」
「あー、まあ、うん。でも話すとそこまでじゃないよ。むしろ親身になって話聞いてくれるし、すっげぇ気さくな人だよ課長」
「ふぅん……とりあえず、私はお近付きになる事ないからね。あの整った顔は絶対間近で直視出来ない」
「何だそれ」
「鼻血出る」という私の言葉に少なからず笑ってくれると思っていた私は、仁科君から何の返事もなかった事に一瞬戸惑ってしまった。
あれ?
隣を見ると、少しだけいつもと違う表情の彼がいる。
何だか少し、不貞腐れているような気がしないでもない。
ん?
何だこれ?
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