70人が本棚に入れています
本棚に追加
「ずっと好きでした!」
男らしく一言で想いを伝えたこの男性は、社内でもそれなりに人気のある営業部の渡辺さん。
人当たりの良さそうな優しい笑顔が印象的で、入社したての若い女子社員からは特に人気を集めているらしい。
そんな彼が頬を赤く染めながら告白した相手。
…………え?私??
いや、違う違う。私じゃありません。
「幸田さん、良ければ僕と付き合って下さい!」
私の名前は鈴村真尋です。
うん、幸田さんじゃない。
告白されているのは私の隣にいる女子社員、幸田さんこと幸田咲子さんだ。
私よりも五センチほど高い身長に、男性が好む柔らかい色気を含んだ顔とナイスなバデー。
スカートの裾からスラリと伸びた綺麗な足が今日もキラキラと輝いて見える。
肩より長い茶色い髪をフワッと横に流し、憂いを含んだ大きな瞳で男を真っ直ぐに見つめる姿は女の私でも見惚れてしまうほどだ。
「ごめんなさい……私、今は誰ともお付き合いする気はありません」
優しい声色は甘い音色のようで、断られたにも関わらず男は更に頬を赤く染めている。
「……じゃあ……あの、良ければ友人という形で、あの……」
「それなら是非。嬉しいです」
「っ!ゃっ……た… 、…!」
付き合うという当初の目的を完全に忘れている男性は、まるでヒマラヤ山頂に到達したかの如く大きくガッツポーズをとる。
隣でクスクスと優しく笑っている咲子に、私は思わず冷やな目線を送ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!