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「…………」
仁科君の目が真っ直ぐに私を見ている。
笑うこともなく、だからと言って怒っている訳でもない。
ただ、ひたすらに真っ直ぐ私を見ている。
「紛らわしい事はしないって、言っただろ?」
「ーー、」
やっぱり。
やっぱりそうなんだ。
私のせいで。
私が、仁科君に言っちゃったから。
だから……!
「っ……咲子を、避けるのはやめて」
咄嗟に出た言葉に仁科君は少しだけ眉を吊り上げた。驚いてるって顔だ。
驚いてるのは私だよ?だってこんな、こんなあからさまなっ……
「避けてないよ」
「う、そだ、避けてるよっ」
仁科君が一歩、私の方へと歩み寄る。
この場から去ってしまった咲子の姿はもう見えない。
更に一歩近付く仁科君を見ていると、すごく泣きたい気持ちになって来た。
「避けてない。俺はもう、勘違いされたくないだけだよ」
「ーーーー、わ、たしは……」
何て言えば良いのか分からない。
だって、咲子が本当に仁科君の事を好きなのか分からないし。
けれど、それが本当だった所でその事を仁科君に言える筈もない。
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