恋とは見守るものである。

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「こら咲子。友達を脅すんじゃないって」 良いタイミングで割って入ってくれたのは、飲み仲間の仁科翔太だ。 同期で営業課に入った彼もまた、咲子と初めて個人的に飲みに行った席にいた人物。 新入社員歓迎会で彼と意気投合した私が連れて行ったんだけれど、彼も私同様彼女の豹変ぶりに度肝を抜かされていたのを思い出す。 「何よ、冗談に決まってんでしょーが!翔太は黙ってて!」 「はいはい。ほら、次なに飲む?」 仁科君はすごく気がきく。 というか、咲子の扱いが上手い。 豹変した咲子もすぐさま受け入れた彼は、彼女をどのように扱えば機嫌が直るのか分かっていた。 だからいつも、飲みの席では咲子の隣に仁科君が座る。 気がきく上に顔だって格好良いものだから、咲子とのツーショットは本当に絵になっていた。 加えて背も高いとくれば、女子社員にだってモテる筈だわ。 「真尋、お前はなに飲む?」 ね。 気がきくでしょ。 営業成績が良いのもほんとに納得。 「私はカシスオレンジにする」 「りょーかい。すみませーん」 こんな風に仕事帰り三人で飲む事はしょっちゅうで、この後カラオケに突入する事だってよくある。 気心知れた同僚達に、働きやすい環境の職場。 私、本当についてると思う。
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