恋とは耐えるものである。

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不動広告社。 会長の不動成政(ふどうなりまさ)が立ち上げたこの広告代理店は、国内でもそれなりのシェアを持っている。 全ての分野に流通し、クライアントを心から満足させる事をモットーに活動して来たこの会社へ就職したのはこの業種に興味があったから。 そこまで外向的ではない自分が営業にも携わる事が出来る営業事務課。 この課の業務内容は私にとってすごく有意義な結果をもたらしてくれた。 営業課をサポートする事はとても大変だけれどすごく楽しい。 自分がついて行った商談がまとまった時なんて、心の底から大喜びして飛び跳ねた。 ここで働き始めて三年目。 私はとても充実した毎日を過ごしている。 「いや~、今日は助かったよ鈴村さん。こんなおじさんには化粧品の事なんていまいち分からなくてねぇ」 営業課の柿本課長は四十五歳だが、年齢以上に見た目が若い。 ダンディーと言うよりは癒し系な課長だけれど、その手腕は課長だけあってやっぱりすごいと思う。 「たまたま私が好んで使っていた化粧品の会社だっただけです。それよりも凄かったのは課長の話術ですよ」 「ふふ。こんな私の言葉も真摯に受け止めて下さったあちらの人徳の高さのおかげだね」 そう言って微笑みながら謙遜する柿本課長は、勿論社員から尊敬され頼られている素敵な上司の一人だ。 「契約成立して良かったですね」 「ああ、本当に鈴村さんのおかげだよ。ありがとう」 「いえいえ!お力になれて光栄です」 こういう時、本当にこの会社に就職出来て良かったと思う。
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