第6章

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“先輩のことを、総て教えてください” そんな依頼を、下駄箱ポストに入れた。 そうして、私たちは、放課後の屋上に並んで座っている。 空は、押しつぶされそうな曇天で、まるで私のこころにも圧をかけているようだった。 好きに、なっては、いけない――これ以上。 “どこから話せばいいかな?” 先輩は最初にそう言って、しばし、考えて、口を開いた。 「親父が、行方不明になってから、うちの家計は火の車だったんだ」 いつもとはトーンが違う。太陽のように明るい先輩のいつもの口調は、雲に遮られている。
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