3【館】

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ふと、見ると… 向かって左側に二階に続く階段が伸びている。 「とりあえず… 『いろんな現象が起こる』っていう二階の大部屋に先に行ってみるか」 と私が言うと、吉岡は黙ってコクリと頷いた。 早くも彼の表情は、ビビリモードだ。 私達は階段を上ると、二階へと向かった。 二階に到着すると、これも病院を思わせるリノリウムの廊下が伸びていた。 廊下の両側に小さなドアがいくつか並んでいて、そのどんずまりに一際大きな、手術室を思わせる扉が有った。 恐らく、あの大部屋が『いろいろ起こる部屋』なのであろう。 私達は、まっすぐにその大部屋へと足を向けた。 と… 私は、妙な事に気付いた。 それは… ここに肝試しに来たという島の若者、A君が言っていた言葉である。 『変な足音が聞こえて来たんだよ。ギッ…ギッ…って。 まるで古い木の廊下を誰かが歩いてるみたいな音…』 古い木の廊下だって? そんな廊下…どこにも無いぞ? と… そうこうしているうちに、目指す大部屋の前まで来たので、私達は中に入った。 部屋の内部は、いくつかの棚が壁沿いに設置してあり、数台の机が整然と並んでいた。 机の上には、いくつかのビーカーやフラスコ… 学校の理科の実験に使用するようなガラス器具がいくつも置いてある。 そして、その中には緑や紫などの色をした『どろり』とした感じの液体が入っていた。 「これが… 透明人間の研究に使った薬品って事なのかな?」 おずおずと吉岡が口を開く。 「うぅん。どうだろう」 と、私はその中の一つ、紫の液体が入っているフラスコを手に取り、臭いをかいでみた。 「…え?」 この臭いは、確か…。 と、 その時である! いきなり! ゴォーッ! とばかりに、一際強い風が、ガラスが割れた窓から吹き込んで来た! 吉岡が、思わず「うわっ」と、顔を歪める。
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