3【館】

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と、 それと同時に、 そのモヤが ピタリと動きを止めた。 私は、言葉を続ける。 「でも… たぶん、藤林ってのは偽名だろ? お前誰だ?織田山か?それともその助手か?」 すると… 「私は…助手の羽柴です」 と、静かに男性の声を発したのである。 「ど、どういう事だ?」 吉岡が、おっかなびっくり私に声をかけた。 「ほら。 あのフラスコやらビーカーの中の液体…臭いをかいでみたんだが、あれは薬品とかじゃなくて、染料だ」 「染料?」 「そう。 ほら。私が趣味でやってる染め物なんかで着色する時に使うアレさ」 「でも、何でまたそんな物が…」 「良いかい? 透明って言葉は、向こうが透けて見えるって意味で目に見えなくなるって意味じゃない。 ほら。赤ワインとかカラーセロファンとか透き通ってるけど目に見えるだろ? 透明人間が目に見えなくのは、あくまで『無色透明人間』のみって事さ」 私は吉岡に説明すると、 「舞台演出家の友坂ジュンは、やっぱりあなた方の透明人間の研究に金を出してバックアップしていたんですね? しかも、それは『色付き透明人間』の研究。 友坂は自分が演出する劇の演者にそれを飲ませて『赤透明人間』や『青透明人間』を作り出しパフォーマンスさせようとしていた」 私は、その白いモヤ…いや、織田山の助手だという羽柴という男に静かに声をかけた。
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