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専門的な説明はカツアイするが、
透明…向こうが透けて見えるメカニズムと言うのは、
例えば、ガラスなんかは、光の極小な粒子が貫通するから向こうが透けて見えるって事らしい。
つまり、光の粒子が貫通するくらい分子と分子の間に極小な隙間が有る物体だからこそ、向こうが透けて見えるという訳だ。
で、織田山氏の透明人間理論というのは、
人体にその無数の隙間を人工的に開けると言う…
よくは分からないが、周囲から『悪魔の研究』と呼ばれた理論だったらしい。
そして、彼はそれが元で学界を追われた。
「要するに…
人間の体中に、肉眼に見えない程の小さな穴ぼこを人工的に無数に開けるって事か?」
「まあ、ざっくり言うとそういう事だな。
体中が小さな穴だらけになるんで『スポンジ理論』と織田山氏本人は呼んでたらしいぜ」
私の問いに吉岡は、ニヤリとしながら答えた。
「なるほど」
「ところが…だ」
ここで吉岡は身を乗り出した。
「ある日の事。
その織田山氏と助手の二人が、その研究所から忽然と姿を消してしまったんだよ。
そして、失踪事件だと騒ぎになって警察も動いた。で、結局は未だに二人とも行方知れずのまま。
それが、今から二年前の話だ」
「あれ?」
私は、過去の記憶の糸を手繰り寄せながら口を開いた。
「そういや…
確か、そんな事件を前に新聞で読んだ記憶が有るぞ。
もしかして、その失踪事件って『歓楽島』(かんらくとう)で起こった、あの事件の事か?」
「そう!ご名答!」
と、吉岡は嬉しそうに言葉を返した。
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