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例えば…
ある若者、A君の場合はこうだ。
「俺さ。
ある晩、友達と二人であの建物に肝試しに行ったんだ。
確か、めちゃめちゃ風が強い夜だったな。
建物の中に入って、いろいろ見て回って…
で、二階の一番デカイ部屋に入った時さ。
変な足音が聞こえて来たんだよ。
『ギッ…ギッ…』って。
まるで古い木の廊下を誰かが歩いてるみたいな音…俺らはビックリして、そのまま慌てて逃げ帰っちまった。
やっぱり、あの建物には透明人間が住んでるのかもしれないなって、イイ歳して思っちまったよ」
そして…
また別の若者、B君が言うには、
「俺が友達三人と肝試しにあの空き家に行った時さ。
二階の大きな部屋に行ったら、聞いちまったんだよ…。
何か、ぼそぼそと呟く男の声を。
で…その声、よく聞いてみたら、何と!『お経』だったんだよ!」
「お、お経だって?!」
ビビリの吉岡が真っ青になって口を開く。
「そ、そうなんだ!
で、ビビリまくって、こっから出ようって廊下を走ってたら…
今度は見ちまったんだよ!俺達の前をすーっと横切る…何か白いモヤみたいな人影を!
あの空き家にいるのは、透明人間なんかじゃない!きっと誰かの霊が潜んでるに違いないよ!」
と…
そこで、B君は私と吉岡が、ちょっと気になる事も、ぼそりと呟いた。
「でも…
あの藤林って人、よくあんな怖い空き家の近くに住んでるよなぁ。怖くないのかなぁ」
詳しく聞くと、
何でも、その織田山研究所から数百メートル離れたやはり島の崖っぷちに、小さな木造の小屋が一軒、建っているのだそうだ。
元々は、北海道大学の学生が島に飛来する海鳥の生息状況の調査をする為に建てられた小屋だったらしいのだが、
数年前に藤林なる人物がその小屋を買い取り、一人で住み始めたのだと言うのだ。
しかしである。
島民達の誰もが、その人物の姿も顔も一度も見た事が無いんだそうである。
食料も全て宅配で小屋の前に置いておくよう指示をして、支払いは口座引き落とし。
外部に顔を一切出さずに生活していると言っても過言では無いという事らしい。
さて…。
これまで聞いた話を全て総合してみると…
どうやら『何か現象』が起こるのは…
その廃屋の二階の大きな部屋って事だけは、共通しているようだ。
かくして、私と吉岡は、
島のレンタカー屋で車を借り、いよいよその元・織田山研究所…『透明人間の館』へと向かったのであった。
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