無敵の食欲

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無敵の食欲

 子供の頃から食い意地が張っている。  食べることがともかく好きで、ご飯でもおやつでも、あればあるだけ食べていた。でも、幸運にも太らない体質だったから、余計に遠慮なく好きなだけあれこれを食べてきた。  特に、訪問先でおやつを出されたりすると、さすがに独り占めはしないけれど、その場の人数と振る舞われた品の総数を即座に数え、自分に幾つ回って来るか、あまりが出そうならそれも手に入れられそうかに意識を向けた。  ともかく、意地汚いって自覚があるくらい食い意地が張っている。だから、勝手に予定した分が人に取られるのは我慢できない。  一応、ここで欲しがっちゃダメって場面では抑えるけれど、それ以外では遠慮しない。  そう。誰かのものって決まってない食べ物はアタシのもの。招かれてもいない人間…違う。多分『元』人間が、こそこそ手を伸ばすなんってもってのほか。  だから『食べるんじゃないっ』て睨みながら手をはたいてやった。それを友達に話したら、普通は怖がるとか、そもそも幽霊には触れないよと言われたけど、叩かないと取られそうだったと返事をしたら、アンタは凄いとそうつぶやかれた。  でも、いいんじゃない? 幽霊は撃退できたし、アタシは自分のって思ってたおやつを食べられたんだから。  ごはんもおやつも、食べ物は何もかも美味しい。…こんな美味しい物、幽霊になんか渡さないよ。 無敵の食欲…完
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