#02 彼

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人目に付きにくいという意味では、カウンセリングをするのに最適であるが、一般人には用のない立地なのである。少女を追っている人間が誰であっても、真っ直ぐここに来たのであればまず見つからないはずだ。そう説明して霊弐は、部屋に干してあったジーンズとシャツを適当に見繕って彼女に差し出す。 「僕の服だけど、よかったら。」 少女は白衣のような、地の薄い服を着ていた。この時期、調整されているとはいえ気温は15℃くらい。そのままでは肌寒いはずだ。彼女は何も言わず霊弐の手から服を奪い取ると、周りを見渡す。部屋は広いとは言えず、四畳半ほどしかない。彼女が入ってきた玄関のとなりに見える台所以外に、他に空間が見当たらない。仕切りと言えるものも無い。いや一つだけ、壁に取っ手のようなものがあった。彼女がおもむろに、それに手を触れる。 「ああ、すまない。そこは倉庫だ。僕は外に出ているから、着替えが済んだら呼んでくれ。」 霊弐は玄関を指さすと、軽く微笑んで見せた。
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