#04 追手

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#04 追手

 助っ人を呼ぼうと思って。そう言いながら起き上がって、霊弐は端末を操作する。すると、彼女は霊弐の腕を掴んで言った。 「やめて!」 霊弐を信用して来た、と彼女は続けた。他の人間は信用できない、と。霊弐は別段隠れて探偵をしているわけではないが、自分を頼って逃げてくる人間がいるほど有名である自覚はなかったので単純に驚いたが、ともあれ今は、彼女は自分以外頼りたくないようである。が。 「もう送信してしまった。」 霊弐の手に握られた端末の画面には、送信済みのマークが表示されている。少し焦った表情をしたまま彼女の動きがゼロコンマ数秒フリーズした瞬間である。部屋の扉が、ガンガン、と叩かれた。見ると扉が凹んでしまっている。霊弐は自然と構える。すると、彼女が口を開く。 「ごめん、あれ私。」 え?霊弐が彼女の言葉の意味が飲み込めないでいると、彼女は扉の前に立ち右手の拳を凹みに当て、にやり、と笑う。 「さっきあなたを呼んだときに。ごめん。」 彼女は少し照れくさそうに言うと、てのひらで扉の凹みを撫でる。霊弐は目の前ではにかむ少女の腕力に困惑しつつも、初めて見た彼女の笑顔に少しほっとした。 ガンガン 二人の間に少なからず安堵の気持ちが共有された時、再び扉が叩かれた。彼女は自分じゃない、と首を振る。 ガンガンガンバギ 鈍い音がして、扉の蝶番が折れた。本来開かれるべき方向とは逆に向かって、扉が動く。四畳半の閉塞空間に長方形の穴が開く。応援の割には荒っぽい登場だ、とのん気なことを考えてる場合ではなかった。彼女の表情が凍り付く。穴の中から出てきたのは、黒いスーツにサングラスをかけたがたいの大きい二人組の男だった。霊弐にそんな知り合いはいないしもちろん、今しがた呼んだ応援ではない。突然の事態に二人が動けないでいると、スーツの二人組はゆっくりと近づいてきた。霊弐は咄嗟に壁際にあった椅子を蹴って軽く跳ね、部屋の天井に吊るされた照明を両手で引き抜いて二人組に投げた。飛んできた照明は片方が難なく受け取ったが、二人組が一瞬気を取られた隙に霊弐は、固まっている少女の手を引いて穴に向かって走った。そのまま外に出る。薄暗くなってきていた通路を、迷わず左に曲がり端に一つだけある階段を駆け下りる。少女は意外にも躓くこともなく、霊弐の足についてくる。
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