浄如の奇妙な日常

第一章「カウンセラー」

電球のほのかなオレンジに包まれたシックな装いの店内には、耳を澄まさなければ聞こえないほどの小さなクラシックと、柱時計の鼓動だけが満ちていた。

客席はおろか、カウンターにも人影は見えず、立地の影響だろう客足の少なさがうかがえる。

もしかしたら、この雰囲気に相応しい柔和なマスターが自分の話し相手になってくれるのでは。

…なんて思ってみたが、虫がよすぎたようだ。

しかたなく、1人でテーブル席を占領するのも気が引けたのでカウンターに腰掛けると、不意に声が聴こえた気がした。