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「おかえり」
まばたきをした瞬間、そこには初老の男性が椅子に腰かけていた。
サイフォンを眺めながら優しげな言葉をかけてくる。
あたしは夢でも見ていたのだろうか。
時計に目をやるものの、どれだけ経ったかは分からない。
1秒にも満たなかったかもしれないし、15分は微睡んでいたのかもしれなかった。
整理の追いつかない状況に慌てるあたしを見かねてか、マスターとおぼしき男性は挽きたてのコーヒーを差し出す。
「初来店サービスだよ。
飲めば落ち着くはずさ」
そういいながら自分もカップをあおってみせた。
とりあえず従ってみせて、湯気の立つカップに口をつける。
気を締める為のそれとは違う、おもいやりの苦みが口にひろがった。
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