第一章「カウンセラー」

8/10
前へ
/11ページ
次へ
ほう、と一息ついてから、あらためてきり出してみた。 「あの、さっきのはなんなんですか?」 コーヒーを口に運び、再び受け皿にカップを戻すほど間をあけて、マスターは答えた。 「みな口々に、ナースを見た、と。 問いかけは決まって、三択の理。 悩みを持った者が訪れるたびに、彼女は姿を見せるようでね。 君みたいに彼女に会う人は少ないが確かにいる。 実を言うと、僕は見かけたこともないのだけれど。 ここをはじめて20年と経つが、僕には心当たりもなくてね」 目を細め、昔語りをするような口ぶりでマスターは続ける。 「彼女が選択させるのは、正しい答えじゃなく、きっと君がそれを見つけ出せるためのキッカケにすぎない。 今まで彼女がそうしてきたように、君も自分の存在理由を知り、そして全うできるはずさ」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加