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事故に侵された自分の顔を見ながら思う
鏡に映るには醜すぎる顔であるな、と
「鏡よ鏡、私の顔は元に戻りますかしら」
いつものように鏡は黙っている
私の醜い顔しか、そこには映っていない
「鏡よ鏡、では私はいつ社会に戻ることができますでしょうか」
いつものように鏡は黙っている
私の醜い顔しか、そこには映っていない
回らない首が、痛い
私の首の骨は少々折れているのだ
さて
旦那様が帰って来たので問うてみる
「おかえりなさいませ旦那様。ねえ、私の顔は元に戻りますかしら」
旦那様は私の目をじっと見てこう仰った
「きっと、元に戻る」
「きっと元のとおり、には戻りませんでしょうね」
私はどんな答えが欲しいというのだろう
今日もまた旦那様を困らせてしまった
後悔です。
傷が、痛痒い
旦那様のコートをハンガーに掛ける
否応にも目に入るのは私のケロイドだらけの醜い手であった
いきなり奪われた私の日常と顔と体
後ろ向きに考えすぎてはいけない
そう、命があるだけ幸せなのだ
憎しみは消えないが、何も産まない
しかし
希望は、毎日産まれることができる
それは
私が生きているから産むことが可能なのだ
いつの日か「許し」を孕むことさえ可能なのかもしれない
私は空っぽなお腹をさすりながら言う
「ずっと、待ってるから」
さて、産まれてくるのものは
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