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授業が一通り終わり私、椎名いずみは帰路を一人で辿っていた。
毎日、友人二人と寄り道をしながら帰っていたが本日は二人とも彼氏と共にいるらしい。とことん薄情なやつらだ。
ため息交じりに帰路を進んでいた、その時だ。
「あの、み、みちを、教えてくれませんか…?」
背後から声をかけられ、思わず振り返る。
そこには猫背気味の男が立っていた。真っ黒の服でいかにもあやしい。
無視して歩くと、慌てたようにしながら再び声が聞こえる。
「ええと、その…」
フードを目深に被り、表情こそ見えないが何となく分かる。
「その、…人形…」
「は?」
男が指差したのは妹からもらった手作りのフエルトの小さな人形だ。
つけてつけてと言うからしょうがなしに鞄につけてやったのだ。けれど普段は鞄についているポケットに入れて隠している。
その不出来な人形を指差して男は続ける。
「そ、それ…譲っていただけないでしょうか…?」
あ、やばいやつだ。
そう思い踵を返して走り出そうとした瞬間
「そのフォルムに一目ぼれしてしまったのですよ…!」
目の前に、いた。
「ひっ?!」
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