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それに、透明だったらそんな下世話で嫌な自分は隠せる。
自然と頬は緩み、私は小瓶にそっと口をつけていた。
唇が無機質なガラスに触れる。怪しみながらも私は小瓶を微かに傾けた。するとほんの少し舌に触れただけで恐ろしいほどの甘さだ。甘すぎて、少し気持ちが悪い。
「こんなの、効くわけないか」
自分に言い聞かせるように言い、一度姿見の鏡がある方へと振り返った。
しっかりと自分の姿が映っている。そりゃそうだ、この世にそんなファンタジーなものなんてあるわけが―
「………」
足元からぼんやりと、そしてゆっくりと鏡から私の姿が消えていくのが見える。
「え、え…?」
ぶわっと冷や汗が出る。
まさかこんな、本当に消えてしまうなんてありえない。
けれどそんな私の心の声も届かず、すっかり鏡の中から私の姿は消えてしまった。
「な、んで」
いる。いるのに。確かに私は鏡の前にいるのに。
けれど鏡に映るのは小瓶だけ。小瓶だけが宙に浮かんでいるのだ。
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