第11章 セカンドヴァージン

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俺は腕がどこまで回るんだろう、と思うほど華奢な彼女の身体にしがみついて、耳許で囁いた。 「ずっと一緒にいよう、菜摘。友達としてじゃなく」 「…」 俺の胸に顔を埋めている菜摘が何か言っているが聴き取れない。俺は彼女の髪をそっと撫でた。 「今、何て?」 彼女は顔を上げて妙にはっきりした声で言った。 「…初めてのキスと感動的な言葉は、タイミング一緒は避けて」 …。 ああ、ねぇ。 俺は胸の内で大きくため息をついた。菜摘、復活したな。 「どっちの方を意識したらいいのかわからなくて、結局どっちもインパクトが曖昧になる。両方ともせっかくの…。ちゃんとしっかり味わいたかったのに」 普通に口を尖らせて文句言うな。俺は彼女を離さず、再び顔を仰向かせる。 「キスなんか何回でもできる」 菜摘の口を封じるように、しっかりと、長く。さっきより深く。ややあってそっと離した。 「これからもいくらでも、何度でもできるよ。言葉だって何回でも繰り返せる。菜摘の気がすむまで。もういいよって思うまで」 そしてひしと菜摘の身体を抱きしめてその柔らかい感触に浸ってうっとりする俺に、彼女は冷静な声で忠告した。 「新崎。…ここ、結構な街なか」 「あ」 完全に意識飛んでた…。 繁華街近くのガード下は昼日中でも結構な人混みだ。彼女を腕の中に抱いたまま、さっと辺りを見回したが、特にこっちをじろじろ見ている人もいなくてちょっとほっとする。さっきから腕を振り払ったり引き寄せたり、女の子を盛大に泣かせたり激しく抱き合ってキスを交わしたり割とやりたい放題だったが。さすが都会。 「…で、何で離さないの?」 菜摘にクールに尋ねられて我に返る。けど、勿論離れる気なんかない。 「だって、離れたくない」 「そんなこと言われても」 彼女が少し苦しそうに身を捩ったので、慌ててちょっと緩める。 「ここで永遠にこうしてるわけにいかないでしょ。…ねえ、提案なんだけど」 「何?」 彼女をさっきより軽く、ふわっと抱きしめて髪に頬を寄せる。何というか、結構感動的なロマンチックな気分かも。 でも、菜摘は俺のそんなときめき気分を一発で吹っ飛ばした。 不意に腕が伸びてきて俺の頭の後ろに回り、ぐいと引き寄せて菜摘の方から唇を重ねられる。突然の行動に息が止まりかけた俺の耳許に向けていつもより少し甘い声で囁いた。 「こんなとこで抱き合うより。…二人きりになりたい。一緒に部屋に帰ろう、新崎」
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