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「そんなことになったら…、俺、理性保たないと思うけど」
恐るおそる念を押すと、既に部屋の中に入った菜摘はあっさり答えた。
「でも、もう必要ないでしょ、理性」
わぁ。
…やっぱり、そういうことかあ…。
「新崎、来ないの」
「いや行きます行きます」
慌てて部屋に踏み込む。そこは引っ越しの時以来中を見ることもなかった菜摘の部屋だ。あの時よりさすがに生活感がある。そして、菜摘の匂いがする。少し甘いような、ビスケットっぽい匂い。
ああもう、この部屋に入るだけでも。…変な気持ちになりそうだ。
「そこに座って」
彼女の声に我に返る。
「そこって…?」
見回しても椅子のようなものは見当たらない。
「ベッド」
菜摘は平然と言って、ドアの鍵を内側からかけた。…わぁ、もう。
やばい。どうしよう。俺は何をどうしたらいいんだ。
内心パニックになってぼうっと佇む俺に構わず、菜摘はさっさとベッドに近づき、ぱふんと腰を下ろした。おたおたしている俺をまっすぐ見返して、ストレートにずばっと尋ねる。
「新崎、こんなの嫌?」
「嫌なわけないだろ。いやなことなんか…」
また喉がからからに渇いてきた。声が上手く出ない。
「でも、心の準備が」
「あ、そうか、シャワー浴びる?」
俺はいろんな意味で爆発しそうになった。…ああ、シャワーだしベッドだし鍵だし。やっぱりこれ、そういうことだよね?俺の思い込みとか勘違いじゃないよね?
「いやそうじゃなくて…、そういうことじゃなくて」
「どういうこと?」
菜摘の声に、ふと不安げな色がさす。
「…もしかして、女の子のほうからこういうの、嫌だった?…わたし、おかしいかな」
「全然そんなことない」
俺は速攻風よりも速く菜摘の隣に行き、腰を下ろした。近い。ベッドの上だし。
さあどうしよう…。
「嫌じゃないよ。むしろ俺の方が…、なんか、勇気がなくて。菜摘を傷つけそうだし。理性が飛んで滅茶苦茶なことしたら…」
「大丈夫だよ。思うようにして」
菜摘は優しくそう言って、俺の頬にそっと手を当てた。
「新崎のしたいようにしていいよ。それでも新崎はわたしを傷つけたりしない。それはわかってるから」
「何でそんなことわかる?」
俺は掠れた声で尋ねる。菜摘の顔が近い。身体も。もう爆発しそう。てかする。
「新崎のこと知ってるもん。…全部、知ってる。身体以外」
俺は菜摘を引き寄せて激しくキスした。そのままベッドに押し倒し、覆い被さった。
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