第11章 セカンドヴァージン

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「そんなことになったら…、俺、理性保たないと思うけど」 恐るおそる念を押すと、既に部屋の中に入った菜摘はあっさり答えた。 「でも、もう必要ないでしょ、理性」 わぁ。 …やっぱり、そういうことかあ…。 「新崎、来ないの」 「いや行きます行きます」 慌てて部屋に踏み込む。そこは引っ越しの時以来中を見ることもなかった菜摘の部屋だ。あの時よりさすがに生活感がある。そして、菜摘の匂いがする。少し甘いような、ビスケットっぽい匂い。 ああもう、この部屋に入るだけでも。…変な気持ちになりそうだ。 「そこに座って」 彼女の声に我に返る。 「そこって…?」 見回しても椅子のようなものは見当たらない。 「ベッド」 菜摘は平然と言って、ドアの鍵を内側からかけた。…わぁ、もう。 やばい。どうしよう。俺は何をどうしたらいいんだ。 内心パニックになってぼうっと佇む俺に構わず、菜摘はさっさとベッドに近づき、ぱふんと腰を下ろした。おたおたしている俺をまっすぐ見返して、ストレートにずばっと尋ねる。 「新崎、こんなの嫌?」 「嫌なわけないだろ。いやなことなんか…」 また喉がからからに渇いてきた。声が上手く出ない。 「でも、心の準備が」 「あ、そうか、シャワー浴びる?」 俺はいろんな意味で爆発しそうになった。…ああ、シャワーだしベッドだし鍵だし。やっぱりこれ、そういうことだよね?俺の思い込みとか勘違いじゃないよね? 「いやそうじゃなくて…、そういうことじゃなくて」 「どういうこと?」 菜摘の声に、ふと不安げな色がさす。 「…もしかして、女の子のほうからこういうの、嫌だった?…わたし、おかしいかな」 「全然そんなことない」 俺は速攻風よりも速く菜摘の隣に行き、腰を下ろした。近い。ベッドの上だし。 さあどうしよう…。 「嫌じゃないよ。むしろ俺の方が…、なんか、勇気がなくて。菜摘を傷つけそうだし。理性が飛んで滅茶苦茶なことしたら…」 「大丈夫だよ。思うようにして」 菜摘は優しくそう言って、俺の頬にそっと手を当てた。 「新崎のしたいようにしていいよ。それでも新崎はわたしを傷つけたりしない。それはわかってるから」 「何でそんなことわかる?」 俺は掠れた声で尋ねる。菜摘の顔が近い。身体も。もう爆発しそう。てかする。 「新崎のこと知ってるもん。…全部、知ってる。身体以外」 俺は菜摘を引き寄せて激しくキスした。そのままベッドに押し倒し、覆い被さった。
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