第11章 セカンドヴァージン

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「高校一年で?途中までいったの?…結構生意気じゃない。東京の子は進んでるね、新崎」 めっちゃ棘あるじゃん…。 俺は力なく言い返した。 「東京は関係ないだろ。お前の住んでたとこだって、してる奴はもっとしてると思う。…いや、うちはさ、共働きの家だったから。昼間誰もいないし…」 しどろもどろになり、黙る。なんか余計なことばっか言ってる気がする。何言ってんだ俺。 菜摘はふてくされたように頬杖をついて俺を見た。さすがに手は止まっている。 「親が共働きだからって女の子連れ込むような男の子ばっかとは限んないでしょ。全国の共働き家庭のみんなに謝ってよ」 「謝るかそんなの」 知らんわ! 菜摘はあーあ、と声を出して伸びをした。 「そっかぁ、十六かそこらでもう女の子といちゃいちゃしてたんだぁ。ふーん、楽しそうでいいね。なんかやる気なくなっちゃた、仕事」 「仕事関係ないだろ」 お前だってその頃もうあいつのこと好きだったくせに。そうは言えないながらもこっちもむくれる。他人のこと言えるのかよ。 「大体、その時の経験で全部だから。高校二年からはもうまっさらに何にもないよ。それで今に至るだから。悪かったな未経験で」 …自虐。 「経験の有る無しなんて大したことじゃないよ」 思いがけなくフォローが入った。菜摘の方に視線を向けると、揶揄う様子もなく生真面目な顔で言葉を続ける。 「どうせそのうち経験なんかするんだし。一年か二年、せいぜい数年間の違いだけでしょ。長い目で見たら大した違いじゃないじゃん。それに、本当は経験の内容の方がずっと大事なんだし。あってもしょうがないようなことばっかじゃ何にもならない。それより新崎みたいに、好きな相手としかしない人の方がずっといいよ」 「…そっか」 何とも言い様がなく、黙る。多分本心からそう思ってるのはわかるので。『あってもしょうがないことばっか』ってのは当然自分のことだろうし…。 しかし、俺が好きな人としかしたくないってのは何で知ってるんだろう。そんな話、したことあったっけ? 「その子、どんな子だったの」 まだこの話終わってないのか! 「えっと…、結構大人しい感じの。割と普通」 そんなことしか言えないの、って目で俺を見るな。 「可愛かった?それとも綺麗系?」 「…可愛かった」 正直に答えると、菜摘はぶんむくれた。 「ふぅん、よかったね。可愛い子といちゃいちゃ、青春してさ」
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