第11章 セカンドヴァージン

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菜摘の話や普段のありさの態度からうっすら察するに、結構彼女への執着は強いように思えたんだけど。去る者は追わない主義なのかな。 それとも、冷静に見せてるのは表面上のことで、実際ルームメイトを探すまで待てっていうのも引き留めの意図があるのかも…。 「菜摘、どっちにしろ新しい部屋は探し始めないか。代わりのルームメイトが見つかり次第すぐに引っ越せるように、ちゃんと手配しておいた方がいいと思う」 俺がはっきりした口調で強めに主張すると、菜摘もすぐに頷いた。 「それはそうだね。家賃のことがあるからあんまり勝手もできないけど、このままずるずるになり兼ねないもんね」 彼女もそこら辺は懸念していたらしい。共通認識が持てたところでちょっと前進した気分になれた。 「じゃあ、これからネットで検索したり不動産屋を回ったりして部屋を探そうよ。さほど広さは必要ないよな。お前はそんなに荷物ないし。引っ越し代は気にしなくて平気じゃないかな。俺と岡野と、他にも数人呼べば充分」 不意に、握りしめていた手が抜き取られた。浮き浮きと喋っていた俺は虚を突かれて、え、何?と戸惑う。何だろう、何か不快に感じさせることあったのかな。 「ごめん、菜摘。俺、先走りすぎた?何か嫌な思いさせたかな」 「違う。そうじゃないの」 はっきりした、でも何処か思いつめたような声が俺の胸に暗雲を立ち込めさせる。というかもう、不安しかない。 何を言い出そうとしてるんだろう。 止めてくれ、何も言わないで、と呻きかけた俺に、彼女は辛そうな様子ででもきっぱりと言った。 「ごめん、新崎。…新崎とはそういう風になれない」 頭が真っ白…。 天国から地獄。何で? 今の台詞、取り消してくれないのか。そんなことない。そんなこと…、無理。 菜摘なしでこの先…。 「…何で?」 比喩じゃなく頭の奥がガンガン鳴ってる。俺と菜摘は周りの雑踏の中で二人、凍りついたように立ち止まって向き合った。 「俺のこと、やっぱり嫌いになった?俺、何か無神経なことしたかな」 「違う、そうじゃない。新崎は悪くない、全然」 慌てて俺の言葉を遮る菜摘。目に必死さが浮かんでいる。 「じゃあ何で」 言いかけて気づく。あれ以来全く話し合ってなかった。でもこれは多分、そっちの問題だ。 『彰良』。 全身から一気に力が抜ける。本当はその場所に座り込みたい。何とか自分の身体を気力で支えた。 「…やっぱり、俺じゃ駄目なんだ」
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