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スギちゃんに掴まえられた状態で、ミナミの後ろ姿に手を伸ばしてみる。
でも、それも空しく、姿は見えなくなり、
スギちゃんはお構いなくどんどん歩いて行く。
そうすると、次は同僚と後輩の二人組がこちらを見つけて、手を振った。
少し離れていて、顔だけ確認できる程度の距離にいた。
「俺らも帰りますよ。」
遠くにいる人に呼びかけるようなジェスチャーで言っているのが聞こえる。
「おう。」
と、スギちゃんは適当に返事をして、その二人の前を通り過ぎていく。
二人は不思議そうにこちらを見ていた。
「待って、二人とも一緒に2件目行こうよ!」
この二人にも呼びかけてみる。雑
踏で聞き取れないのか、首を傾げていた。
たくさんの人の往来で、それもたちまち見えなくなった。
「ねえ、あの二人も誘って行こうよ!みんなで行った方が楽しいよ。」
それには、へへへと笑って返してきた。
その笑顔を見たら、まあ二人で行ってもいいかなという気持ちになった。
それは決してこれから何か起きると予感していたわけではなく、
もう抵抗しても無駄という諦めと、単にお酒をもう少し飲みたいと
思ったからだった。
そして何より、前回タクシー代を出してくれた話を聞いていたので、
遅くなったらそうしてくれる人なのだろうと勝手に想像していたのだった。
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