セカンド

12/47
前へ
/51ページ
次へ
「帰り、タクシーチケット宜しくね。」 「そんな権限、俺には無いっすよ~。」 と、にやにやしながら答えてくる。 「ちゃんとしてよね。それから、お洒落なお店じゃなきゃ帰るから。」 普段はあまりこういうことを言うタイプではないのだが、 相手が随分ヘラヘラしているせいか、キツめに言ってしまう。 「わかった、お洒落なとこね。オッケー!」 そう言って、駅のロータリーからタクシーに乗った。 「○○ホテルまで」 渋谷の高級ホテルの名前を運転手に告げると、隣の私を引き寄せてぐいっと抱きしめた。 「ちょっと離してよ。」 腕から逃れようと体を離そうと試みるが、びくともしない。 「いいじゃん、ちょっとだけ~」 「いやだ、ばかなの?」 「うん!」 眼を瞑ったまま、口元をにかっと笑わせた。そしてそのまま勢いよくイビキをかきはじめた。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加