12人が本棚に入れています
本棚に追加
恋なんて、なんとあっけないものだろうか。
30歳という、不安を目一杯抱えた年齢を目前にして、気付くことになってしまった。
恋が終わるとき一番辛いことは、相手を嫌いになることではなく、相手に興味がなくなることだと、昔本で読んだことがある。
まったくその通りになった。
彼以外に何の興味もなかったのに、もはやなんの感情もわかない。
怖い。自分で自分が怖くなった。
狂おしいほど彼を求めたのに。
彼以外何もいらない。彼が死んだら私も死ぬ。
彼のことだけで体中が埋め尽くされていた。
なのに。
これは一体何が起きたのか。自分でも自分が信じられなかった。
こんなにも人の気持ちというものは、潮がサーっと音を立てて引いて行くようになくなるものなのか。
私も大人の女になったのね。そんなことを考える気持ちの余裕まで出ていた。
たしかに、この一年間は低空飛行を続けているだけだった。
私にはもう愛情なんてなくなっていた。
でも一人になるのは嫌だから、次が見つかるまで。
お金持ちという価値だけが残り、最後にプレゼントでもたくさんもらってからサヨナラしよう。
それくらいの打算がなんとか関係を繋ぎ止めていた。
彼は絶対に一緒になると言い、私を引き留めた。
でも、一緒になれないことなんか、本当はもっと前から知っていた気がする。
それでも、信じていた。
一緒になれない現実を受け入れないようにした。
彼は頑張っている素振りを見せてくれた。
素振りではなく、本当にそうしていたと思う。
けれど、その夢は叶えるにはとても厳しく、現実味がなかった。
でも、彼は口が裂けてもそうは言えなかったのだろう。
私を手放したくないという心の裏側も、見え隠れしていた。
本当は、それも気付いていた。
だけど、気付かないように自分自身に言い聞かせていた。
だって、彼のことしか愛していなかったから。
最初のコメントを投稿しよう!