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2015年2月
中華圏での春節だ。
ここは台湾の市内にある高級アパートメントの一室。
隣に寝ているのはこの家の家主で、私の男ではない。
お昼過ぎに、台湾の桃園国際空港に降り立った。
空港にはこの男が出迎えに来た。
到着ゲートに辿り着き、出迎えの人々でごった返しているロビーを見渡す。
「おーい」と声がする方にぱっと顔を向けると、見慣れた男の顔がふにゃっと笑顔になって近づいてきた。
おそらくほとんどが台湾人と思われる人ごみの中で、グッと力強く抱き寄せられた。
息が出来なくなるくらい、この男の胸の中に抱きしめられる。
私が気に入らない柔軟剤の匂いが今日はしない。
「よく来たね、待ってたよ。」
180㎝の長身。
切れ長で少し垂れ目の瞳が、優しくそして悪戯っぽく私を見下ろしながら見つめる。
「来ちゃったよ。」つられて私も上目遣いでニコッと微笑んだ。
この男は日本で3本の指に入る大手商社に勤めており、3ヶ月前にこの台湾へ駐在員として異動してきた。
家族はまだ日本に残っていて、3月半ばくらいに引っ越してくるという。
家族は妻と、噂では3人子供がいるという。
でも、それはあまり関心がないので、深く聞いたことはない。
柔軟剤の香りがしないのは、今この男が一人暮らしをしていることを強く感じさせた。
私服は初めて見た。39歳のおじさんにしては元々かなり若い見た目だ。
普通の若い男性のような服装で、ダサくはない。
ちょっと安心した気持ちになった。
それまでスーツ姿の男としか会ったことが無かったからだ。
一応商社マンなのでスーツ姿は見栄えがしていた。その安心感を裏切ることのないファッションで安堵したのだ。
デニムを履き、モスグリーン色のセーターの上に白ベースの柄物ストールを巻いている。横長の肩掛けショルダーのカバンを背負って、小綺麗なスニーカーを履いている。
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