セカンド

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2014年5月。 職場の同僚に誘われた飲み会でこの男に出会った。 「もうだめかも。」 東京・丸の内ににある社内の会議室でランチを取りつつ、同僚のミナミに呟いた。 「じゃあ、合コンでも行こう。結婚してるけど人脈ありそうなおじさんが合コンしたいって言ってるから、どう?」 「うーん、そうだね。」 32階からお台場が見渡せる。 そのさらに奥には羽田空港に離発着している航空機が見える。 かつて私も乗務していた、懐かしい職場だ。 そんな清々しい景色をぼんやり眺めながら返答していた。 「外を見るのは大切よ。頑なに飲み会行かない主義なのは知ってるけど、ここまで来たらいいでしょ。」 「そっか、そうだね。」 もちろん、既婚ということは誘われた時点で知らされていた。 だから、この男がどうのこうのというつもりは全く無く、その知り合いでも紹介させようという話を同僚としていたのだった。 渋谷駅からほど近い隠れ家的なお洒落な居酒屋に集合することになった。 その日は突然の土砂降りで、行く前に完全に気分が盛り下がっていた。 地下から繋がっているお店だということが分かり、少し気分が回復した。 ミナミが電話で連絡を取り合って、幹事の男が分かりやすい場所まで迎えに来てくれることになった。 ミナミは、何度かこの男と合コンを開催していて、よく知っている仲らしい。 私たちも相手の男たちも同じ会社に勤めている。 巨大な企業なので、私はもちろん面識は無い。 私は転職組で、契約社員ということもあり、他部署の人間は殆ど知らない。 私は機械部門で、その男たちは化学品部門という情報だ。 「おー、こっちこっち。」 渋谷の地下街は雨のせいでいつもより人がごった返していた。 この天気と込み具合のせいで、すでに帰りの電車が気になっていた。 その男はすぐに見つかった。頭一つ分背が高かった。 ミナミは軽く手を振りながら男のいる場所に向かった。私もそれを追う。 「ごめんね、雨なのに。でも地下で繋がってるからまだマシよー。」 へらへらとした雰囲気の人だと思っただけだった。背が高い以外は、特に目につくような顔立ちでもなく、平凡な印象だった。
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