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「おいで、カミラちゃん」
女が私を呼んだ。
「屋根から落ちちゃったの? ドジだね」
そう続けて屈託のない笑顔を私に向ける。
返事をするのをためらい、じっと女を見ていると、「カミラ」と父にたしなめられた。
「今日から家族になるリコだ」
そう言って父は女を私に紹介する。
「わたしをお母さんと思ってね」
女は、動こうとしない私の方へ、自分から歩み寄る。
「お母さんなんて言ってるが、お前と同じ五歳だ」
しかたない。とりあえず返事をしておかないと、父は機嫌が悪くなる。
「にゃあ」
どのみち私は、彼女を受け入れるしかないのだ。
「バルツァルのとこの娘だ。仲良くしてやってくれ。
同い年でも、猫のお前の方がお母さんみたいなものだろうけどな」
「よろしく、カミラちゃん」
そう言ってリコは私の頭を撫でた。
fin.
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