2章

3/3
前へ
/7ページ
次へ
落ちついた強い眼差し、飄々とした物言い。 知らないはずなのに俺はこいつを知っていると思った。 相手の言葉にも、自分の考えにも驚いて目を見開く。 どうも相手も同じように考えているのか少し悩むように首を捻っている。 「多分初めて会ったけど…お前強いな。俺が見てきた中で一番強い」 「お、おお。ありがとう。剣道は小さい頃から好きなんだ。良かったら見学するか?」 素直に告げると相手は照れつつ笑った。 「俺は見る専門だから入らないけど、ぜひ」 「なんだそりゃ」 変な奴だなぁと笑いながら手招きされ、そこで靴を脱ぐと後をついていく。 ふいにこんな場面が前にもあったような… 無いはずなのに先ほどからおかしい。 「…前も同じ会話したことないか?」 振り返った奴が不思議そうに尋ねてきて。 互いに眉を寄せて、あるはずがないのに共有しているらしい感覚に違和感を覚える。 「まあいいか。良かったら部活入れよ」 「だから見る専門だって」 妙にしっくりくる会話が面白くて、前からの友達のように笑いながら再び歩き出した。 昔この並木道は山で、戦場だったと後に知る。 この日は帰る頃まで何かを伝えるように花弁が舞い踊り続けていた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加