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戦うことが当たり前、欲と無情の世界が広がる混沌としていた時代。
手に入れたものでは満たされぬ、各々の胸の内にある秘は救えぬまま。
それでも生きるために戦った。
互いにここまで来る間、血しぶきを浴び所々傷を負っていた。
そんな状況に似合わず、頭上では桜が満開に咲き乱れ可憐にハラハラと花弁が落ちてくる。
「まさかお前と刃を交えることになるとは」
「…幼き頃から解っていたこと」
幽閉されていた屈辱を忘れてはいない。
けれど、まだ何も知らない子供の頃に無邪気に遊んだ記憶も…忘れはしない。
「切れ」
目の前の馬鹿は己を切れと言って刀を脇に置いて胡座をかいた。
怒りなのか、激しい感情が溢れ出す。
「ふざけるな…正々堂々と勝負しろ!情けなどいらぬ」
お互いの力量は嫌と言うほど知っている。
お前に会ってしまったということは、己の最後を意味する。
それでも戦わなくてはいけないなら全力を望む。
「………承知した」
眉を寄せて目を瞑り、刀を握ると立ち上がる。
互いに胸の内は同じと解っていても血を変えることは出来ないのだ。
「今度は平和な時代に会おう」
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